木下惠介作品上映会 2025年度上半期(2025/4~2025/9)上映特集「木下惠介と感官(センス)の冒険」

特集「木下惠介と感官(センス)の冒険」

「映画は総合芸術」といわれるように、卓越した映画作品は、優れた美術、音楽、演劇、文芸、建築など、様々な芸術表現の要素が巧みに構成されて実現します。そのすべてを統括し、総合的に判断して一本の作品に結実させることこそが、映画監督の役目です。「天才監督」と呼ばれる木下惠介は、幼いころよりあらゆる感官(sense)や感受性(sensitivity)が鋭敏であったと言われ、バランス感覚に秀でていました。

感官とは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚、すなわち「五感」のことを言います。五感を超え、物事の本質を捉える能力が「第六感」だと言われています。これらすべてに並外れた敏感さを持つ木下の感性が、数々の名作の基盤となりました。本特集では、木下惠介によるあらゆる感官の冒険を思わせる6本の作品を紹介します。


©1960 松竹

上映日 4月20日(日)

『笛吹川』

1960(昭和35)年、117分、特殊カラー、シネマスコープ

監督・脚色:木下惠介/原作:深沢七郎/撮影:楠田浩之/音楽:木下忠司
出演:高峰秀子、田村高廣、市川染五郎(二代目松本白鸚)、岩下志麻、中村萬之助(二代目中村吉右衛門)

【あらすじ】

『楢山節考』に続く深沢七郎原作で、戦国時代を舞台に、笛吹川のほとりに住む貧農一家の5世代にわたる約60余年の物語を描いた年代記スペクタクル。1951年『カルメン故郷に帰る』で日本初の総天然色映画に挑戦した木下が、約10年後、あえて映画草創期のような白黒フィルムに一部分のみ色彩を焼き付ける部分的カラー映画に挑んだ異色の作品。

1960年度キネマ旬報ベスト・テン第4位


©1948 松竹

上映日 5月18日(日)

『カルメン純情す』

1948(昭和23)年、67分、モノクロ、スタンダード

監督・脚本:木下惠介/撮影:楠田浩之/音楽:木下忠司
出演:水戸光子、小澤栄太郎

【あらすじ】
罪を犯して逃避をはかる男と、そんな男から離れられずにいるダンサーの女の心理を描いたサスペンス・ロードムービー。破滅に向かう二人の緊張感あふれるアバンチュールに、緩急をつける実験的な音響が拍車をかける。戦後まもなくの物資の乏しい時代に、たった二人のキャストをオールロケーションで撮影した意欲作。

第3回毎日映画コンクール監督賞


©1964 松竹

上映日 6月15日(日)

『香華(一部 吾亦紅の章)』

1964(昭和39)年、88分、モノクロ、シネマスコープ

監督・脚本:木下惠介/原作:有吉佐和子/撮影:楠田浩之/音楽:木下忠司
出演:岡田茉莉子、乙羽信子、田中絹代、杉村春子、加藤剛、岡田英次

【あらすじ】
明治後期の紀州からはじまる、色香漂う享楽的な母と、遊郭に芸者として売られた娘・朋子の愛憎入り乱れた年代記。芸事のお稽古に向かいめきめきと開花していった娘の元に、母が花魁として表れる。母と呼ぶことも禁じられ、朋子はその姿を見つめるしかできない…。あわせて3時間半を越える木下惠介最長の作品の前篇。

1964年度キネマ旬報ベスト・テン第3位


©1964 松竹

上映日 7月20日(日)

『香華(二部 三椏の章)』

1964(昭和39)年、116分、モノクロ、シネマスコープ

監督・脚本:木下惠介/原作:有吉佐和子/撮影:楠田浩之/音楽:木下忠司
出演:岡田茉莉子、乙羽信子、田中絹代、杉村春子、加藤剛、岡田英次

【あらすじ】
有吉佐和子のベストセラー小説を原作とした文芸大作の後篇。関東大震災を経て、時代は大正から昭和へ。一本立ちした娘・朋子は、軍人の恋人・江崎から二人の結婚のために芸者をやめてほしいと言われ、旅館「花津川」を開業。江崎との結婚を夢見る一途で真面目な朋子のささやかな夢は、母との因縁と時代の潮流に飲み込まれていく。

1964年度キネマ旬報ベスト・テン第3位


©1947 松竹

上映日 8月17日(日)

『不死鳥』

1947(昭和22)年、82分、モノクロ、スタンダード

監督・脚色:木下惠介/原作:川頭義郎/撮影:楠田浩之/音楽:木下忠司
出演:田中絹代、佐田啓二、山内明、小杉勇、高橋豊子、河崎保

【あらすじ】
戦争未亡人が大戦で亡くした夫との6年にわたる青春と真実の愛を語る。木下作品に欠かせない俳優・佐田啓二は今作でデビューし田中絹代の相手役に抜擢。田中絹代は10代の女学生から母親までを演じる。木下演出初のキスシーンでは、時代に翻弄され、家柄問題に引き離されそうになる2人の燃え上がる熱が肌で感じられる。


©1949 松竹

上映日 9月21日(日)

『新釈四谷怪談』

1949(昭和24)年、158分(前篇・後篇)、モノクロ、スタンダード

監督:木下惠介/原作:鶴屋南北/脚色:久板栄二郎/撮影:楠田浩之/音楽:木下忠司
出演:田中絹代、上原謙、滝沢修、佐田啓二、山根壽子、杉村春子

【あらすじ】
子を流産し病がちな妻・お岩を疎ましく思う夫・民谷伊右衛門は、悪党の直助にそそのかされ、自ら妻を毒殺する。罪の意識とお岩の恨みに怯える伊右衛門は次第にお岩の亡霊を見るようになる。無残な死を遂げるお岩と、仇討のために闘う妹・お袖を、田中絹代が一人二役で怪演。誰もが知る名作怪談の、木下流センスによる“新”解釈版。


【開催情報】
上映日:各月第3日曜日
上映開始時刻:①10:00~(9:30開場)②14:00~(13:30開場)
会場:木下惠介記念館・アートホール
入場料:100円
対象:小学生以上
主催:木下惠介記念館 (浜松市旧浜松銀行協会)
お申し込み:不要。当日受付のみ。上映1時間前より受付開始します。


■ 公共交通機関をご利用ください。お車でお越しの際は近隣の有料駐車場をご利用ください。
■ 浜松駅バスターミナル3番のりばより全路線「鴨江アートセンター」下車。