木下惠介記念館映画上映会 2026年度上半期(2026/4~2026/9)上映特集「Emotion in Motion——木下映画におけるカメラワークとメロドラマ」

特集「Emotion in Motion——木下映画におけるカメラワークとメロドラマ」

「emotion(感情)」という言葉のラテン語の由来には「motion(動き)」の意味が含まれています。カメラで登場人物の情緒を捉えて物語を伝える映画(motion picture)が、大衆文化の中で発展する過程において、豊かな感情表現を有するメロドラマ(誇張された抒情劇)は大きな功績を残しました。

木下惠介は抒情映画の名手として知られ、幾度となくメロドラマの手法を用いてきました。また、1943年の木下初監督作から『なつかしき笛や太鼓』(1963)までのほとんどの木下映画の撮影技師を務めた楠田浩之(1916-2008)は、巧みなカメラワークで木下の多彩なビジョンを具現化しました。善悪の二元論や大胆な感情表現など、メロドラマは通俗的なジャンルとしてしばしば軽視されがちですが、木下・楠田流メロドラマには実に豊かな映像表現が随所に見て取れます。

本特集では、二人の盟友がカメラを通して、時にジャンルを定義づけ、時にそれを超える、表現豊かな6作品を紹介します。


©1946松竹

上映日 4月19日(日)

『わが恋せし乙女』

1946(昭和21)年、75分、モノクロ、スタンダード

監督・脚本:木下惠介/撮影:楠田浩之/音楽:木下忠司/出演:原保美、井川邦子、増田順二、東山千栄子、勝見庸太郎、山路義人

【あらすじ】
信州の牧場を舞台に、青年の叶わぬ恋を描く。広大な草原での移動撮影で、兄妹の如く育った美子に向けた甚吾の揺れ動く恋心を捉える。ギリシア語の「歌(メロス)」と「劇(ドラマ)」が語源であるメロドラマは、音楽と密接な関係があり、木下の実弟・忠司は本作で映画音楽家デビューを果たした。2026年4月、忠司と楠田(撮影)は共に生誕110周年を迎える。

1946年度キネマ旬報ベスト・テン第5位


©1948松竹

上映日 5月17日(日)

『破戒』

1948(昭和23)年、99分、モノクロ、スタンダード

監督:木下惠介/原作:島崎藤村/脚本:久板栄二郎/撮影:楠田浩之/音楽:木下忠司/出演:池部良、桂木洋子、滝沢修、宇野重吉、山内明、薄田研二

【あらすじ】

被差別部落の生い立ちを隠して生きる若者を描いた島崎藤村の同名小説を、久板栄二郎が脚色。木下はあえて原作未読のまま演出に挑み、アイデンティティの悩みを抱える等身大の青年の姿を、抒情性豊かに丁寧に描いた。ヒロインとの恋愛に軸を置きながらも、クライマックスを緊張感のある長回しで描いた同性の親友同士の濃密な関係性も見どころ。を一度去ることになる。2025年は終戦から80年にあたる。

1948年度キネマ旬報ベスト・テン第6位/第3回毎日映画コンクール監督賞


©1954 松竹

上映日 6月21日(日)

『女の園』

1954(昭和29)年、141分、モノクロ、スタンダード

監督・脚色:木下惠介/原作:阿部知二/撮影:楠田浩之/音楽:木下忠司/出演:高峰秀子、岸惠子、久我美子、田村高廣、田浦正巳、東山千栄子、高峰三枝子

【あらすじ】
阿部知二の小説『人工庭園』を原作に木下が脚色・監督。学生運動を予兆したかのように、封建的社会の箱庭のような女子大学の中で自由を求めて闘う女学生たちを描いた。学生が自殺に追い込まれる過程にはサスペンスの演出を巧みに用いながら、互いの偽善を問う女学生や寮母の秘められた過去など、多面的な人物描写が優れたメロドラマを生んでいる。

1954年度キネマ旬報ベスト・テン第2位/第9回毎日映画コンクール監督賞、脚本賞/第5回ブルーリボン賞脚本賞


©1955 松竹

上映日 7月19日(日)

『野菊の如き君なりき』

1955(昭和30)年、92分、モノクロ、スタンダード

監督・脚色:木下惠介/原作:伊藤左千夫/撮影:楠田浩之/音楽:木下忠司/出演:有田紀子、田中晋二、笠智衆、田村高廣、小林トシ子、杉村春子

【あらすじ】
原作は伊藤左千夫の『野菊の墓』。故郷を訪れた老人が若くして死んだ初恋の相手の思い出を振り返る、木下流メロドラマの代名詞的名作。木下と楠田が古い写真のフレームから着想したという回想シーンの楕円形の覆いは、各ショットの連続性を保つために撮影技師の綿密な計算と技術が肝要であった。楠田は、本作の撮影が評価され各種映画賞を受賞。

1955年度キネマ旬報ベスト・テン第3位/第10回毎日映画コンクール撮影賞(楠田浩之)/第6回ブルーリボン賞技術賞(楠田浩之)


©1959松竹

上映日 8月16日(日)

『今日もまたかくてありなん』

1959(昭和34)年、74分、カラー、シネマスコープ

監督・脚本:木下惠介/撮影:楠田浩之/音楽:木下忠司/出演:久我美子、高橋貞二、三國連太郎、田村高廣、十七代目中村勘三郎

【あらすじ】
『楢山節考』を観て木下作品出演を熱望した十七代目中村勘三郎のために木下が書き下ろした作品。庶民のささやかな日常を脅かす悪を許さない木下の姿勢は、善悪の対立を鮮やかに描くメロドラマ的構成に反映されている。木下映画には珍しいクライマックスの殺陣シーンは、あえて遠くにカメラを据えて躍動感を排し、淡々と、詩的に描いた。


©1955 松竹

上映日 9月20日(日)

『遠い雲』

1955(昭和30)年、99分、モノクロ、スタンダード

監督:木下惠介/脚本:木下惠介、松山善三/撮影:楠田浩之/音楽:木下忠司/出演:高峰秀子、佐田啓二、高橋貞二、田村高廣、石濱朗、田浦正巳

【あらすじ】
帰省先の飛騨高山の悠然とした風景の中で、未亡人になった初恋の人・冬子と再会した圭三。冬子が圭三を追って駅のホームまで駆けつけるラスト5分、発車ベルが鳴り列車が動き出す中、静と動のショットの切り替えしで緊張感は頂点に達する。同年に高峰の実生活の夫となった木下組の松山善三との共同脚本で、再燃する大人の恋を描いた。

第10回毎日映画コンクール撮影賞(楠田浩之)/第6回ブルーリボン賞技術賞(楠田浩之)


【開催情報】
上映日:各月第3日曜日
上映開始時刻:①10:00~(9:30開場)②14:00~(13:30開場)
会場:木下惠介記念館・アートホール
入場料:100円
対象:小学生以上
主催:木下惠介記念館 (浜松市旧浜松銀行協会)
お申し込み:不要。当日受付のみ。上映1時間前より受付開始します。


■ 公共交通機関をご利用ください。お車でお越しの際は近隣の有料駐車場をご利用ください。
■ 浜松駅バスターミナル3番のりばより全路線「鴨江アートセンター」下車。