木下惠介作品上映会 2025年度下半期(2025/10~2026/3)上映特集「田中絹代よ永遠なれ」
特集「田中絹代よ永遠なれ」
日本映画界の偉大な女性映画人・田中絹代は、14歳で松竹に入社してから67歳で亡くなるまで50年以上を映画に捧げ、約260本もの作品に出演、さらに6本の映画を監督しました。その姿は、没後50年をまもなく迎える今日に至るまで、深く映画史に刻まれています。
戦中から戦後にかけて、純情派から一流の演技派俳優として成長する中で、溝口健二、小津安二郎、成瀬巳喜男などの日本映画を代表する名監督から絶大な信頼を得た田中絹代が、特に革新的な演技を見せたのは、木下惠介の監督作品でした。田中と木下の二人は共に映画への不屈の愛と情熱を宿し、日本映画を牽引しました。本特集では、その強い絆を象徴し、二人の映画人の魂が重なる作品を紹介します。

上映日 10月19日(日)
『はじまりのみち』
2013(平成25)年、96分、カラー、ビスタサイズ
字幕付き
監督・脚本:原恵一/撮影:池内義治/音楽:富貴晴美/出演:加瀬亮、田中裕子、ユースケ・サンタマリア、濱田岳、宮崎あおい、大杉漣
【あらすじ】
木下惠介生誕100年プロジェクトとして、木下監督の随筆を元に製作され、映画『陸軍』のシーンが印象的に引用される。戦中、国策映画として製作を依頼された映画『陸軍』が「女々しい」と批判されたことに腹を立てた木下惠介は、映画界を去り、故郷・浜松の家族と遠方へ疎開する。病に倒れた木下の母・たまを演じる田中裕子と、『陸軍』で息子を思う母を演じる田中絹代の、二人の田中の姿が重なる。

上映日 11月16日(日)
『陸軍』
1944(昭和19)年、87分、モノクロ、スタンダード
監督:木下惠介/原作:火野葦平/脚色:池田忠雄/撮影:武富善男/出演:田中絹代、東野英治郎、上原謙、三津田健、杉村春子
【あらすじ】
明治大正昭和と続く福岡のとある一家の年代記。陸軍省後援の国策映画として製作。
出征していく息子の姿を追いかける「軍国の母」の細かな感情の機微を、田中絹代が全身全霊で伝える。本作が国策映画にそぐわないとして軍にクレームをつけられ、次回作が中止になった木下は映画界を一度去ることになる。2025年は終戦から80年にあたる。

上映日 12月21日(日)
『結婚』
1947(昭和22)年、86分、モノクロ、スタンダード
字幕付き
監督・原作:木下惠介/脚色:新藤兼人/撮影:楠田浩之/音楽:木下忠司/出演:田中絹代、上原謙、東野英治郎、東山千栄子、井川邦子、鈴木彰三
【あらすじ】
戦前に田中絹代が再ブレイクを果たした『愛染かつら』の上原謙との名コンビが再演。戦後の厳しい世相に苦しむ恋人同士の戸惑いを描く社会派メロドラマ。お見合い結婚が主流だった終戦直後の時代に、自由恋愛による結婚に憧れる若者の共感を得て成功を収めた。長く続いた戦時下の抑圧的な社会からの若者たちの「解放」と「自由」を象徴する一作。

上映日 1月18日(日)
『婚約指輪(エンゲージ・リング)』
1950(昭和25)年、96分、モノクロ、スタンダード
制作・監督・脚本:木下惠介/撮影:楠田浩之/音楽:木下忠司/出演:田中絹代、三船敏郎、宇野重吉、薄田研二、吉川満子、増田順二
【あらすじ】
病気療養中の夫の主治医であり若く壮健な江間と惹かれ合ってしまう女を田中絹代が演じる。戦後日本人俳優としてはじめてアメリカを訪問した田中絹代による、帰国後第一作。国内ではアメリカナイズされた田中への猛烈なバッシングが起こり、本作の評価も影響を受けたが、三島由紀夫も絶賛するなど、隠れた木下映画の名作。

上映日 2月15日(日)
『楢山節考』
1958(昭和33)年、98分、カラー、シネマスコープ
監督・脚色:木下惠介/原作:深沢七郎/撮影:楠田浩之/音楽:杵屋六左衛門、野沢松之輔/出演:田中絹代、高橋貞三、望月優子、市川團子(二代目市川猿翁)、宮口精二
【あらすじ】
深沢七郎原作の同名小説を映画化。民間伝承の姥捨伝説を背景に、70歳になると楢山参りの風習がある山奥の寒村の物語。主演の田中は、老母役のためにさし歯を抜いて挑んだ。歌舞伎の要素が存分に活かされ、舞台の早替わりの手法や、音楽に長唄や浄瑠璃が用いられた。本作の日本の様式美はヴェニス国際映画祭で絶賛された。
1958年度キネマ旬報ベスト・テン第1位・監督賞・女優賞(田中絹代)、第13回毎日映画コンクール日本映画大賞・監督賞・音楽賞

上映日 3月15日(日)
『この天の虹』
1958(昭和33)年、106分、カラー、シネマスコープ
監督・脚本:木下惠介/撮影:楠田浩之/音楽:木下忠司/出演:田中絹代、高橋貞二、久我美子、田村高廣、大木実、川津祐介、笠智衆
【あらすじ】
日本が高度経済成長に突入する頃、当時「東洋最大」の八幡製鉄所(現・日本製鉄)の社宅に住む人々を中心とした群像劇。日本の明るい未来の象徴とされた、工場から立ちのぼる「七色の煙」の描写と対比的に、人々の恋愛や家族の姿を素朴に、誠実に描いた作品。優秀でありながら製鉄所の体格規定に落ちた息子をあたたかく支える母親を田中絹代が演じる。
【開催情報】
上映日:各月第3日曜日
上映開始時刻:①10:00~(9:30開場)②14:00~(13:30開場)
会場:木下惠介記念館・アートホール
入場料:100円
対象:小学生以上
主催:木下惠介記念館 (浜松市旧浜松銀行協会)
お申し込み:不要。当日受付のみ。上映1時間前より受付開始します。
■ 公共交通機関をご利用ください。お車でお越しの際は近隣の有料駐車場をご利用ください。
■ 浜松駅バスターミナル3番のりばより全路線「鴨江アートセンター」下車。
- 満員の場合は、入場をお断りすることがあります。
- 上映開始から15分過ぎての入場はお断りすることがあります。
- 他の方の鑑賞の妨げになる場合は退出をお願いすることがあります。
- 会場内の写真がウェブサイト、SNSなどに掲載されることがあります。
- 諸般の事情により、開催形態を変更することがあります。予めご了承ください。