木下惠介作品上映会 2023年度上半期(2023/4~2023/9)上映特集「社会派映画監督・木下惠介」

特集「社会派映画監督・木下惠介」

木下惠介は戦前から戦後に渡り、日本映画の黄金時代を築き上げた一人と言えます。敗戦後、軍国主義が崩壊し民主主義へと大きく移行する中で、木下惠介は時代の空気を敏感に捉え、市井の人々を見つめ続け多くの社会派作品を世の中に送り出しました。
家庭崩壊により本音を隠して非行に走る若者たち、真実を探るもののモラルを逸し善魔化する記者、大学の絶対的権威と無慈悲な規則に反発する女子学生たち、通り魔に刺され死亡した息子のために国に訴えかける父親・・・木下惠介は鋭いまなざしをもって、社会に生きる人々の葛藤や苦悩等を映画で表現しました。
この特集を通じ、現在の世界で起きている様々な出来事について、木下惠介作品に常に内包されている社会への問いかけと共に、考えるきっかけにしていただければと願います。


©1956 松竹

上映日 4月16日(日)

『太陽とバラ』

1956(昭和31)年、85分、モノクロ、スタンダード

監督・脚本:木下惠介/撮影:楠田浩之/音楽:木下忠司
出演:中村嘉葎雄、石濱朗、沢村貞子、有田紀子、久我美子、杉田弘子

【あらすじ】
「太陽族」と呼ばれる享楽的な若者の非行が肯定されがちな風潮に憤った木下惠介が製作した反骨の社会派青春映画。貧しい母子家庭に育った清は、行き場のない怒りを晴らすかのように非行を繰り返し、太陽族のブルジョア青年のグループに引き入れられ、ついには自滅的な世界に迷い込む。戦後、日本社会が大きく転換する時代に翻弄された親子に焦点をあてた作品として、母の嘆きを描いた『日本の悲劇』と並び、息子の悲劇を描いた力作。

1956年度米ゴールデングローブ賞外国語映画賞/1956年キネマ旬報ベスト・テン第9位


©1980 松竹

上映日 5月21日(日)

『父よ母よ!』

1980(昭和55)年、132分、カラー、ビスタサイズ

監督・脚本:木下惠介/原作:斎藤茂男/撮影:小杉正雄/音楽:木下忠司
出演:加藤剛、田村高廣、岩崎加根子、三原順子、夏江麻岐、石田純一

【あらすじ】
ジャーナリストの齋藤茂男のルポルタージュを原作に、木下惠介が作中の新聞記者の眼を通して、戦後35年経ち平和なはずの日本で非行に走る若者たちの実態を追っていく社会的問題作。少年少女たちが反社会的行動にのめり込んでいく中で、親や社会に何を訴えたいのか?彼らの親はどう思っているのか?をドキュメンタリー形式で仕上げ、さらにアニメーションまで駆使するなど、木下惠介の豊かな実験精神を満喫できる一作。

1980年度キネマ旬報ベスト・テン第6位/カルロビバリ映画祭ファシスト闘争賞


©1951 松竹

上映日 6月18日(日)

『善魔』

1951(昭和26)年、108分、モノクロ、スタンダード

監督・脚色:木下惠介/原作:岸田國士/撮影:楠田浩之/音楽:木下忠司
出演:森雅之、淡島千景、三國連太郎、桂木洋子、笠智衆、千田是也

【あらすじ】
劇作家・岸田國士の同名小説を、木下惠介が脚色・監督、野田高梧が共同脚本で映画化。人は善を貫くために時に魔の心を必要とすることの是非を問いかける野心作。かつて好意を持っていた政治家の妻の失踪事件を調査するよう上司から命じられた新聞社の社会部記者の倫理の失墜と葛藤。「善魔」と化していく若き記者を熱演する三國連太郎は、本作でデビューすると共に、役名をそのまま芸名とした。2023年、三國連太郎は生誕100年を迎える。

第2回ブルーリボン賞新人賞(三國連太郎)


©1959 松竹

上映日 7月16日(日)

『今日もまたかくてありなん』

1959(昭和34)年、74分、カラー、シネマスコープ

監督・脚本:木下惠介/撮影:楠田浩之/音楽:木下忠司
出演:久我美子、高橋貞二、三國連太郎、田村高廣、十七代目中村勘三郎

【あらすじ】
木下惠介作品への出演を望んだ十七代目中村勘三郎の起用を想定して、脚色・演出した人間ドラマ。湘南の家を借金返済のため避暑用として貸すことになり、妻は軽井沢の実家へ戻るが、町にはヤクザが闊歩し始めていた…。「今日もまたかくてありなん」と願いながら、ささやかな生活を送りたい庶民たちとそれを脅かすヤクザの対決シーンは、悪を許すまいとする木下惠介の思いを如実に反映させたクライマックスである。


©1954 松竹

上映日 8月20日(日)

『女の園』

1954(昭和29)年、141分、モノクロ、スタンダード

監督・脚色:木下惠介/原作:阿部知二/撮影:楠田浩之/音楽:木下忠司
出演:高峰秀子、岸惠子、久我美子、田村高廣、田浦正巳、東山千栄子、高峰三枝子

【あらすじ】
阿部知二の小説『人工庭園』を木下惠介が脚色・監督し映画化。民主主義に隠れた日本の封建主義を描いた問題作。京都にある良妻賢母型教育を信条とする全寮制の女子大学は厳しい規律で知られている。大学の民主化運動の意識が高まり、自由を求めた学生たちが騒ぎを起こした。日本映画の黄金期を代表する女優の高峰秀子・岸惠子・久我美子の競演による美しくもたくましい傑作。田村高廣は本作で俳優デビューを果たした。

1954年度キネマ旬報ベスト・テン第2位/第9回毎日映画コンクール監督賞、脚本賞


©1979 松竹

上映日 9月17日(日)

『衝動殺人息子よ』

1979(昭和54)年、130分、カラー、ビスタサイズ

監督・脚本:木下惠介/原作:佐藤秀郎/撮影:岡崎宏三/音楽:木下忠司
出演:若山富三郎、高峰秀子、田中健、大竹しのぶ、尾藤イサオ、高岡健二

【あらすじ】
テレビ業界に転身した木下惠介がノンフィクション作家の佐藤秀郎による原作を久しぶりに映画化。不良少年に刺されて死んだひとり息子のために、怒りと悲しみで憔悴しつつも同様の境遇の人々と共に、被害者遺族の補償制度を国に訴えかけていく父親の姿を描く。国家保障という社会問題を扱う本作が世論を動かし「犯罪被害者給付金制度」の成立に貢献したとも言われる。主演の高峰秀子は本作をもって約50年にわたる女優人生に幕をおろした。

1979年度キネマ旬報ベスト・テン第5位、読者選出ベスト・テン第3位


【開催情報】
上映日:各月第3日曜日
上映開始時刻:①10:00~(9:30開場)②14:00~(13:30開場)
会場:木下惠介記念館・アートホール
入場料:100円
対象:小学生以上
主催:木下惠介記念館 (浜松市旧浜松銀行協会)
お申し込み:不要。当日受付のみ。上映1時間前より受付開始します。


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